何がいい作品かというと人それぞれなんだけど、いずれにせよそういう作品っていうのは、人の心を揺り動かすし自分の中に眠っていた過去の出来事とか感覚みたいなものを掘り起こしてくれる。だから自分の中で「うわぁ、これはいい作品だな」っていうものに出会うたびにちょっと嬉しくなるんです。
今回紹介する『横道世之介』はまさにそんな作品で、この映画観ながらなんていうか20代ぐらいの時の感覚を思い出したというかな、「あー、あんなこともあったよな」っていういい意味で過去を懐かしむことができたんですよね。色々な感情の揺さぶられ方ってあると思うんだけど、こういうじんわりと確実に心に響くような作品というのも個人的には好きだったりします。
そんなわけで今回は『横道世之介』という作品を紹介していきます。本作の簡単なあらすじとともに、感想や「ここがよかった!」というところをお伝えしていきます。
※ネタバレアリなのでよろしくお願いします。
横道世之介のあらすじ
まずは簡単なあらすじから。本作の主な舞台は1987年の東京です。主人公は大学に入学するため長崎から上京してきた青年、横道世之介。
世之介は人見知りしない性格で、多くの人たちと出会っていきます。同級生の倉持、年上の女性千春、たまたま教室で席が隣になったゲイの加藤、お金持ちの娘の祥子などと出会い、少しずつ東京での生活にも慣れていきます。
本作は主に世之介が大学に入学してからの1年間を描いたもので、さらに世之介と出会った人たちの16年後の姿や、その時の彼らが世之介とともにいた時代を振り返るような形になっています。
感想
ふと自分の青春時代を思いださせてくれる作品
まず、本作について言うことがあるとすると、世之介の日常というのは「ものすごく印象に残る事件的何か」が起こるわけではありません。どこにでもいそうな大学生の青春の一ページを切り取っているにすぎないんです。なので、観る人によっては世之介と友人たちとのエピソードや、恋愛模様を淡々と見せられているだけに感じてしまうのかななんて思ったりもします。
ただ、個人的にはその何も起こらなさが逆にいいと思うんですよね。こういう日常を描いた青春ものって作品によっては主人公たちに何か特別な試練を与えたり、衝撃的な事件に遭遇させたりすることで、感情を揺さぶることって多い気がしてて。あるいは、主人公がすごくキャラが立ってるというか、例えば「強い意志で絶対にあきらめない」みたいな、あんまいないよねっていうどちらかというと憧れの対象みたいな形で描かれていたりする。
でも、学生時代とか振り返ってもらうとわかると思うんだけど、多くの人にとって自分の学生時代なんてそんな感動のエピソードみたいなもんってなかったりするわけですよ。そんなに絶体絶命のピンチを乗り越えるなんてこともない。学生時代を思い返して思い出せるエピソードなんて、友達との他愛もない話だとか、ちょっとした休み時間のうだうだした時間だとか、サークルのこととか、あるいはちょっと気になるあの人と近づいたりなんてぐらいのもんでしょう。
だから、本作で世之介について語られるエピソードってすごく親近感があって共感もできるんじゃないかな。もちろん、自分と世之介とは性格も何もかも違うんだけど、まだ19歳とか20歳ごろのふわふわした感じとか、「これからどうなっていくんだろうか?」っていう不安定な感じとかその辺も含めて、世之介や彼が過ごした日々を通じて自分の青春時代っていうの思い出させてくれるような気がするんです。
主演二人の演技がとてもいい!!
まぁ、あと言いたいのは「主演の二人がめっちゃいいぞ」ってことです。世之介を演じたのは高良健吾さんで、世之介と付き合うことになる祥子を演じたのは吉高由里子さんなんだけど、この二人がいいんですよ!!
まず、高良さんなんだけど普通に顔立ち整ってるしめちゃイケメンじゃないですか?なので最初に高良さんが演じる世之介を見た時は「世之介ちょっとイケメンすぎじゃね?」って思ったりもしたんです。でも、物語がすすむにつれてその考えは間違ったたなと。「高良健吾いいなぁ」ってなりました。
なぜかっていうとまず見た目ですよね。顔じゃなくて髪型。あのモサっとした髪型がちょっとダサい要素を加えてて高良君のイケメン要素を少し薄めてる。世之介感出てますね。で、もう一個は姿勢ですよね。劇中、特に入学してからしばらくの間世之介ってすごく猫背なんですよ。背中が丸まってて全然ピシッとしてない。なんか頼りないし油断もスキもある感じっていうのかな、それがまだこの先何も決まっていない世之介のユラユラした安定してない感じを出してるなと思いました。
でも、そんな世之介でも季節が巡っていくとちょいちょい成長しているなぁっていうところが見て取れてそこがまたいいんですよね。決して飛躍的な成長というわけじゃないんだけど、田舎臭さが周りに充満していた入学時よりも色々な面で気を使えるようになってたりとかね。アパートの隣に住む女性から「スキがなくなった気がする」なんて言われたりして、ちょっとずつ大人の階段を上っていく世之介の姿が微笑ましいんです。
あとは、祥子役の吉高さん。祥子はお金持ちのお嬢さんで世間知らずなんだけど、その感じをすごく自然に演じられているように感じました。「あー、なんかこういう世間知らずなお嬢さんいそうだわ」って見ているこちらがその存在を自然に受け入れてしまう。
特に印象的なのがあの独特の声で「世之介さーん」と呼びかけるところかな。何回かそういう場面があるんだけど、ちょっと甘えているような、でも男にこびているというよりは世之介といれるのがうれしくて自然とそういう声が出ちゃってるって感じ。吉高さんの声質も含めて祥子役ハマってるなぁと思いました。
かと思いきや、16年後を描いた場面ではそんなお嬢様の雰囲気はどこへやらで、国連で働き海外を飛び回って活動を続けるという、はたから見たらすげぇ立派な人になっているのだからビックリ。「世之介さーんって言ってたあの祥子はいずこへ!?」となります。まぁ、彼女がそうなるきっかけも世之介との出会いがあったからこそなんだけど、その辺りはぜひ本編を見て確認してみてほしいです。彼女のいい意味で大人になったたたずまいと、世之介と付き合っていた時代のゆるふわな時を比較すると、ちょっとセンチメンタルな気持ちになると思います。
主演の二人の演技を見るだけでも、かなりこの映画は楽しめるのではないでしょうか?
まとめ
今回は『横道世之介』の感想や自分がよかったと思うところを中心にお伝えしてみました。
ど派手なアクションも、血の気のひくようなホラーもいいですが、たまにはこんなまったりと観られるような作品を楽しんでみてはいかがでしょうか?あなたも本作を通じて世之介や彼らが生きた青春時代に触れてみてください。きっと何か感じるものがあるはずです。
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※本ページの情報は2019年9月時点のものです。料金の変動や最新の配信状況はAmazonプライム・ビデオのサイトにてご確認ください。