以前僕がこのブログで紹介した『くも漫。』という漫画があります。
参考記事:『くも漫。』闘病漫画だけど思わず笑ってしまう作品です!! - エンタメなしでは生きてけない!!
この漫画は著者の中川さんが、とある場所でくも膜下出血になり倒れてから、無事に退院し自分の本当にやりたいことを見つけるまでを描いた作品です。
詳細は↑の記事からご覧いただきたいのですが、その中川さんが別の作品も出しているということを知ったんですよね。『くも漫。』を読んで「この人面白れぇぇな!」と思っていた僕はさっそくその作品を読んでみることにしました。それがこちら!!
そんなわけで、今回はこの『探さないでください』を読んだ感想を書いていきたいと思います♪
失踪した人と失踪された人の様子を知ることができる
この作品は中川さんが中学校の教師として勤めていた時に、学校から逃げ出した(失踪した)時のことを振り返る形になっています。
当時の失踪先を訪ね、その時の思いや出来事を振り返ったり、ご自身の家族に失踪当時の話を聞いていくわけです。
僕がこの作品を読んでいて興味深いなと思ったのは、「失踪した人と失踪された(家族や当時の同僚など)側の話を知ることができる」ってことですね。
失踪した人が失踪当時を「自分は失踪してこうこうこういう生活をしてました」っていうのは、ちょこちょこ作品としてはあるんですよね。吾妻ひでおさんの『失踪日記』とかはけっこう有名です。
ただ、この作品のように、自分の様子だけじゃなく失踪当時の関係者に話を聞いて「当時どんな気持ちでどんな行動をしましたか?」っていうのを聞いたことを漫画にするっていうのはあんまり聞いたことがないし、失踪された側がどんな気持ちでどんな風に行動するのかを知ることもめったにないと思うんですよ。で、それが僕としては非常に興味深いなと思ったわけです。
とはいえ、失踪というのは決してポジティブなものではないんですよね。特に中川さんの場合、家族や友人など誰にも言わずに失踪をしてしまったので、周囲の人間からすると最悪の状況を想像することだってあるわけですよ。生きてるか死んでるかすらわからない。そんな当時の状況のことを、中川さんのお母さんが振り返る場面っていうのは非常にドキッとさせられる場面です。
中川さんのご両親は中川さんが失踪後、連絡を受けて教員住宅に彼の安否の確認にいきます。もちろん、家の中には中川さんはおらず、机の上には「探さないでください」という文が書かれた紙切れがあるのみ。
中川さんのお母さんはショックで既に涙ボロボロだったわけですが、お父さんは冷静だったんですよね。まぁ、泣いてもしょうがないだろうみたいな。ただ、家の中にある階段を見て、ハッとなり一気にダダっと二階に駆け上がるんです。それはなぜかというと、「中川さんが二階で首をつってるかもしれない」と思ったから。きっと嫌な予感がしたんでしょう。
でも、中川さんの姿はそこにはありませんでした。その事実に安堵するお父さん。その後にまるで自分自身に言い聞かせるように語る言葉が印象的でした。
たぶんマナブは
生の方向に進んでるんだと思う
だから大丈夫 大丈夫
引用元:『探さないでください』p36 中川学 平凡社
この言葉は、とりあえずその場で死んでいるわけではないっていうことがわかった安堵感を表すとともに、でも、もしかしたらどこか別の場所で‥‥‥っていう不安感を必死で打ち消そうとしているお父さんの感情をよーく表していて、読んだ時にすごく胸に来ましたね。
逃げてもいい、またやり直せばいいと思える
結論から言うと、紆余曲折ありつつも(途中けっこう衝撃的な場面も)中川さんは再び家族の前に姿を現します。で、これまた紆余曲折あって、彼はこうやって漫画家として自分の作品を残しているわけです。
もちろんね、みんながみんな中川さんのように漫画家になれるのか?と言ったらイエスと断言することはできませんよ。(ハードルはだいぶ下がってはいると思うけど)逃げた先で必ずうまくいくという保証もできません。
でも、逃げたからといって人生が終わるわけじゃない。逃げたからといってその人の全てが否定されるわけじゃない。そこからまた自分なりに動いて、あがいて始めれば何かが生まれるかもしれない。何か結果を残せるかもしれない。
この作品を読むとそんな気持ちになれるんですよね。
なので、逃げることに対して過剰に怖れている人とか、逃げたらもう終わりだっていう人はこういう作品を読んで、ちょっと視野を広げるというか「逃げてもいいんだ、やり直せるんだ」という感覚だけでも持っておくといいんじゃないかなと思います。この感覚持てればまた動き出せるはずです。
まとめ
そんなわけで、今回は中川学さんの『探さないでください』を読んだ感想を書いてみました。
個人的には非常に好きな作品でした。中川さんのネガティブな部分とか、弱い部分なんかは非常に共感できたし、僕もどっちかというとしんどいことから逃げ出したくなるタイプの人間なんで、自分が中川さんの立場だったらどうしたかなぁなんてことを、けっこう自分事として考えることもできましたね。で、そういう人が逃げた後に自分の方向性を見つけて少しずつ動いていく姿を見て、「自分も頑張ろう」って元気づけてもらえた気がします。
個人的にこの作品を読んだ上で言いたいのは、
「逃げたとしても人生は終わらないし、やり直せる」
ってことですね。本作を読むことで改めてそういう気持ちになれたので、読んで良かったなと思っています。なのでもし、興味があればぜひご覧になってみてください!!
それでは今回はこの辺で。