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『リング0 バースデイ』超能力をもって生まれた女、山村貞子の悲劇を描いた作品

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貞子と言えば日本を代表するホラー映画『リング』でおなじみの人物。彼女は父親に井戸に放り込まれ数十年にわたって閉じ込められていました。その際に放たれた怨念によって見た者は1週間で死んでしまう「呪いのビデオ」ができたわけです。では、貞子はなぜ井戸に放り込まれなければならなかったのか、リング以前の彼女がどのような人物だったのか、その物語を描いたのが今回紹介する『リング0 バースデイ』という作品です。

 

公開は2000年。原作は鈴木光司鈴木の『バースデイ』の『レモンハート』という話から。監督は鶴田法男。この方はビデオ『ほんとにあった怖い話』など数々のホラー作品の監督をしています。脚本は『女優霊』『リング』『リング2』などを担当した高橋洋。

 

主人公で18歳の劇団員山村貞子を演じるのは仲間由紀恵。劇団の音響係で貞子と親しくなる遠藤博を田辺誠一。同じ劇団で衣装係の立原悦子を麻生久美子。貞子の行方を追う新聞記者を田中好子が演じています。

 

概要、あらすじ

舞台は1968年。東京の劇団「飛翔」に一人の研修生がいた。18歳の山村貞子だ。彼女が所属する劇団では次の公演「仮面」に向けて劇団員たちが日夜練習に励んでいた。そんな中、劇団員たちはみな井戸が登場する不思議な夢をみる。公演の日時も迫り、ますます練習に熱が入る中、主演を務める葉月愛子が練習中に突然死亡してしまう。疑いの目は愛子の代わりに主役に抜擢された貞子に向けられるが、音響係の遠藤は貞子をかばう。

 

一方、新聞記者の宮地は貞子の過去をたどっていた。彼女は12年前に行われた貞子の母親である山村志津子の能力を立証する公開実験で婚約者をなくしており、その原因が貞子にあると考えていたからだ。宮地は貞子が生まれた伊豆大島で彼女の担任の教師と接触。彼女から貞子はもう一人いるということを教えられる。

 

宮地はついに劇団に所属している貞子のもとにたどり着く。復讐に燃える宮地。劇団員たちに疑われながら初主演作品に挑む貞子。そして、いよいよ悲劇の物語は幕をあげるのだった。

 

※ここからはネタバレありなのでよろしくお願いします。

 

感想

ホラー映画をイメージすると肩透かしを食らうかも・・・

「リングと言えば貞子、貞子と言えばホラー!」といった具合に、『リング』を観たことがある人ならやっぱりホラー映画をイメージすると思うんですよね。呪いのビデオと呪いの元凶になった山村貞子という存在の不気味さ。それを象徴するのが、テレビからニュルっと飛び出してくるあのシーンなわけで。顔の表情もうかがえないぐらい長い髪を垂らしていて、その髪のすき間からギョロっとこちらを見る目に戦慄を覚えた人も多いのではないでしょうか?常識では理解できない存在が貞子なんですよね。

 

で、今回はその貞子を主人公にした作品です。つまり、人間としての山村貞子にスポットを当てているんですよね。『リング』では理解のできない存在だった貞子にスポットを当てることで、彼女の人間味の部分が明らかになってくる。するとどうなるかというと、怖くなくなっちゃうんですよね。なぜなら、人って理解できない存在だから怖がるのであって、「ああ、こういう人間だったんだな」というのがわかってしまうと、怖くなくなっちゃうわけです。

 

なので、『リング』のような不気味さ、わけのわからなさみたいなものがはらんでいる怖さみたいなものを期待すると、本作は少し肩透かしを食らった感じになってしまうのかなと。まぁ、リングという名がつく作品なら、もう怖いヤツを期待しちゃうのはしょうがないことなんでしょうけど。

 

怖くて悲しいメロドラマとして描く

貞子をヒロインとして描くことを鶴田監督だったり、脚本の高橋さんは危惧していて『Jホラー、怖さの秘密 』(メディアックスMOOK別冊カルトムービー)にもその時のことが書かれています。

 

で、鶴田法男監督に、今度は貞子がヒロインなんだってって話したら、「それマズいじゃないですか」って言うから、「マズいでしょ」って*1

引用元:『Jホラー、怖さの秘密』p71 メディアックスMOOK別冊カルトムービー

 

そこで、彼らが思いついたのはメロドラマにしちゃおうかというもの。メロドラマとは簡単に言えば「恋愛劇」ですね。この作品を山村貞子と遠藤博の恋愛劇として描こうと。そこで、参考にされたのがスティーブン・キング原作の『キャリー』という作品。『キャリー』も超能力を持つ少女にもたらされた悲劇を扱った作品ですね。

 

ただ、それだけじゃあ怖くないということで、本作では劇団員である山村貞子とは違うもう一人の貞子を出すことで、恋愛劇に怖さの要素も加えています。

 

それでも、貞子が純然たる超能力ヒロインだと会社が望んでいる霊的なホラーにはなりにくい。だから、もう一体、子ども時代の貞子を出しました。子供の時の貞子は完全に異常で、記者たちの前での超能力の公開実験の時に人を殺したりしちゃって、とんでもないヤツだったんで、屋敷の奥に閉じ込められているっていうことにして、ずっと閉じ込められているヤツが解き放たれて、東京に出てきちゃって何故か演劇少女になっているっていう(笑)

 引用元:『Jホラー、怖さの秘密』p71 メディアックスMOOK別冊カルトムービー

 

劇団員としての貞子は劇をやって普通に生活をしたいとも思っているんです。じゃなきゃ、わざわざ東京まで来て劇団になんて入りませんよね。もちろん、恋愛だってしたいでも、もう一人の貞子の存在と特別な力がそれを許さない。そしてラストには、もう一人の貞子に飲み込まれてしまい新たな悲劇を生みだすことになります。その悲劇は貞子自身にも降りかかり、井戸に生きたまま放り込まれることで、『リング』で登場する呪いのビデオが生まれるわけですね。

 

ホラー映画として見ると物足りなさを感じるかもしれないけど、怖さや悲劇を盛り込んだ恋愛劇として見ると、本作はしっくりくるのかなともいますね。怖さだけを望むなら『リング』でガッツリ怖がってください。

 

ツッコミどころもありはするが・・・

個人的には楽しめた作品なんだけど、物語の中には「ん?これはいいのか?」っていうところもいくつかありました。代表的なところを2つほど紹介します。まず一個目。貞子を追う新聞記者の宮地が彼女を殺すために拳銃を用意するんですけど、「いやっ、拳銃はそんなに簡単に手には入らないんじゃ・・・」とかね。

 

もう一個は、先ほども紹介したんだけど、貞子はもう一人いるってところ。この物語だと貞子って元々くっついていたのが二人に分裂したって設定なんですよね。いくら超能力者とはいえそれってありうるのか?と思ったり。まぁ、こっちはまだ単なる人間の尺度では測れない存在なのでということで割り切ってしまえばいいんだろうけど。

 

まとめ

今回は『リング0 バースデイ』を紹介してみました。『リング』シリーズは原作と映画版でけっこう設定やテイストも違うのでそれを見比べてみるのも面白いかもしれません。後、今作で貞子を演じた仲間由紀恵が若くてめっちゃきれいなのでそこも注目!!ということで、興味がある方は是非ご覧になって観てください。

 

*1: