エンタメなしでは生きてけない!!

これは面白い!!これは人にすすめたい!!そんなエンタメ作品の紹介をしていきます!

『ミザリー』売れっ子作家を救った命の恩人の正体は?

※このブログはアフィリエイト広告を利用しています。記事中のリンクから商品を購入すると、売上の一部が管理人の収益となります。

怪物、ゾンビ、幽霊、機械などなど映画には恐怖の対象として描かれるものがたくさんありますが、中でもやっぱり怖いのは人ですよね。僕らは時に人が起こすとんでもない事件に驚きゾッとさせられることがあります。人が抱える狂気、残酷さは底が知れない。もしかしたら僕やあなたにもそんな一面があるかもしれません。

 さて、今回はそんな人が抱える狂気を見事に描いた映画『ミザリー』を紹介したいと思います。

 

 

本作は1990年にアメリカで公開、日本では1991年に公開されています。原作はスティーブン・キングの同名小説。監督はスタンド・バイ・ミーなども取ったロブ・ライナー。脚本はウィリアム・ゴールドマン。小説家ポール・シェルダンを演じるのはジェームズ・カーン。ポールを看病するアニー・ウィルクスをキャシー・ベイツが演じています。

 

あらすじ、概要

小説家のポール・シェルダンは「ミザリー」のシリーズ作品で人気の作家だった。しかし、ミザリーシリーズを書くことをやめようと考えていたポールは、宿にこもって新たな作品を完成させる。その帰り道、雪山を車で走っていたポールは誤って自動車事故を起こして大けがをし気を失ってしまう。そのままだと命を落としかねない状況だったにもかかわらず、ポールは一命をとりとめる。ポールを救ったのはミザリーのこよなく愛するアニー・ウィルクスだった。元看護婦のアニーは医療知識を活かし大けがを負ったポールを看病する優しい人のように見えたが、次第に彼女が抱える狂気にポールは恐れを感じ始めるのだった。

 

※ここからはネタバレアリなのでよろしくお願いします。

 感想

ファンはありがたい存在ではあるが………

ポールを助けたアニーはポールと彼が書く「ミザリーシリーズ」の大ファンで、「ナンバーワンのファン」と言い切ってしまうぐらいなんですよね。そのファンっぷりは相当なもので彼女は豚を飼ってるのですが、その名前をミザリーにしてしまうぐらいにね。まぁ、でもこれぐらいならファンあるあるですよね。ところが、物語が進むにつれて彼女の度を越えたミザリーに対する思い入れが明らかになってきます。

 

それは、ポールが新作の原稿をアニーに見せたことがきっかけでした。本来であれば本として売り出される前の原稿を他人に見せることなどないわけですが、なんといってもアニーは命の恩人です。そして何より彼女はミザリーの大ファンなわけですよ。そんな人から原稿を読みたいと言われたら断るわけにもいきません。ポールは良かれと思って彼女に原稿を見せます。ところが、アニーはこのポールが書いた結末が気に入らない。それどころかその結末は彼女にとって決して許すことのできない受け入れがたいものだったんです。

 

驚くべきはその後の彼女の行動です。ファン心理としては自分の納得できない結末や展開だったとしても、せいぜい「なんだよあの結末!ふざけんな!」って文句を言うぐらいじゃないですか?ところがアニーは違います。ポールの目の前で怒り狂った後になんと、「この原稿を焼け」と強要するんですね。この時ポールは大けがを負っていてベッドから出ることもできずアニーの介助がなければご飯も食べれない状況、つまり生殺与奪の権をアニーに握られているわけです。しかも、どうやら原稿を燃やさないと自分にまで被害が及びそうだと瞬時にわかるぐらい、目の前にいる女は狂気をはらんでいる。そのためポールはせっかく書き上げた原稿を自らの手で燃やすことになるんです。

 

まぁ、大抵のファンっていうのは平和なもんですよ。多少作者の作ったものが自分の想像したものと違っていたとしても、それも含めてその作家のファンであるわけですよね。でも、中にはアニーのような思い込みが強くて、「自分の意にそぐわないものは許さない」というファンだっているかもしれない。作者が考えた結末を変えさせちゃうわけですからね。これはもう歪みに歪み切ってますよ。ファンはありがたい存在ではあるけど、中にはアニーのような恐ろしいファンもいるかもしれない。本作はあくまで架空の物語ではありますが、もしかしたら原作者のスティーブン・キングも少なからずファンというものに対して恐怖を抱いていたのかもしれません。

 

という感想を映画を観て思ったのですが、僕は原作の『ミザリー』も映画を観終わった後読んだんですよね。そしたら、訳者あとがきのところにゾッとするエピソードが書かれてたんです。スティーブン・キングがテレビ番組の出演した後にとあるファンから一緒に写真を撮ることを頼まれます。その男は「ナンバーワンファンである」と自称する男で、撮った後にはその写真にまでサインをせがんできます。ここまではまぁよくイルファンでしょう。ところが、驚愕するべきはその男の名前ですよ。キングが写真に描いた名前は「マーク・チャップマン」この名前聞き覚えある人もいるんじゃないでしょうか?そう、彼はあのジョン・レノンを射殺した「マーク・チャップマン」だったんですね。(『 ミザリー』 文春文庫/スティーヴンキング【著】,矢野浩三郎【訳】を参照)

 

このエピソードを知ると、やはりキングはファンというものは自分にとって見方ではあるけどその一方で敵というか攻撃をしてくる対象であるとどこかで思っていたんじゃないかな?その、恐怖心を具体化したキャラクターがミザリーだったのではないでしょうか。それにしてもキングとチャップマンのエピソードはゾッとしますね。

 

アニーを演じたキャシー・ベイツの素晴らしい演技

このミザリーという作品の恐さをより引き立てているのが、アニーを演じたキャシー・ベイツの演技でしょう。彼女はこの作品でアカデミー主演女優賞を受賞しましたが、彼女が演じるアニーは怖すぎる。怒り狂った時の見開いた目や憎しみのこもった目、不敵な笑みなど顔の表情やセリフで感情豊かにミザリーの狂気を演じたかと思いきや、感情のない無表情もまた怖すぎる。キャシー・ベイツは元々舞台を中心に活躍していたらしいのですが、豊かな表現力はその賜物かもしれませんね。

 

また、DVDの特典映像を観たところ、アニー役はあまり顔の知られていない女優をということで、彼女が選ばれたそうです。これが顔のしれた女優さんとかだったら何となく親近感がわいてしまうわけですが、あまり顔が知られていない女優が演じることで何者感、得体のしれない感を観ている方は持ち、それがより恐怖心を煽ることになったのではないでしょうか。キャシーのちょっとごつめの体型も含めてこのチョイスは正解だったと思います。

 

とにかくキャシーが演じるミザリーの恐さは実際見てみないとわからないと思うので、ぜひ本作をご覧になってみてください!ほんとにゾッとします。

 

最後まで続くハラハラ感!

本作は主人公のポールがアニーという狂気を持つファンの女性と対峙することで観ている方もその恐怖を体感するというものですが、個人的には「ポールはアニーからどうやって逃げるのか?」という脱出までのハラハラ感も非常にいいなぁと思ったんですよね。

 

まず脱出までのハードルがとても高い。ポール自身は両足を骨折するという大けがを負っててロクに体も動かせません。部屋にはドアが一つで当然カギを持っているのはアニーだけ。窓はありますが、仮に窓を壊して外に出れたとしてもポールのケガでは遠くまで逃げることはかなわず雪に埋もれるか寒さで凍え死にしてしまうでしょう。またアニーの家は山の中にあり周りにもほとんど家はなく人通りもほぼゼロに近い状況で人もめったに訪ねてこないんですね。これ、冷静に考えたら結構絶望的ですよね?

 

それでもアニーが買い物に行っている間にポールはなんとか部屋から抜け出して、車いすで移動しながらどうにかこの家から脱出できる方法を探すわけです。いつ、アニーが帰ってくるかもわからない恐怖と闘いながらね。これポールの立場からしたら生きた心地がしないですよね。しかも、部屋を物色する過程でアニーの恐ろしい部分がさらに明らかになってくる。そこでアニーが運転する車の音が徐々に近づいてきます。ポールは慌てて部屋に戻りますが、自由の利かない身体ではスムーズに部屋まで戻れません。この時、徐々に家に近づいてくるアニーと部屋まで戻ろうとするポールの場面を交互に切り替えることで、間に合うのか間に合わないのかをギリギリまでわからないようにしてるんですね。この演出がすごくハラハラするので、ぜひ実際に見てもらいたいなと思います。

 

まとめ

今回は『ミザリー』を紹介してみました。僕は映画も原作も見てどちらもよかったのですが、個人的にはキャシー・ベイツが演じるアニーがとにかく恐ろしいので、文章が苦手という人はぜひ映画版だけでも観てもらえたらなと思います。人間ってホントに恐いなぁというのを改めて胸に刻み込んだ作品でした。恐いもの好きな人にはおススメです!!