マンガなしでは生きてけない!!

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手塚治虫傑作選「戦争と日本人」戦争を知らない世代はぜひ読みたい一冊

色々な漫画家さんの短編集や傑作選を読んできましたが、ここ最近読んだ中で一番いいなと思ったのが漫画の神様手塚治虫先生の傑作選です。

 

 

手塚先生自身が先の戦争を経験しているということもあり、先生の作品の中から特に戦争の悲惨さ、虚しさなどを描いた作品が収録されています。

個人的に凄く心に残ったのはブラックジャックから抜粋した『アナフィラキシー』という作品。読んだことがない人はネタバレになるのでご注意を。

 

あらすじはこうです。ある国の軍人の息子が戦地で心臓に銃弾を撃ち込まれて瀕死の重傷を負いました。ただ、その手術自体はものすごく難しいというわけではありません。ただ一つ問題があってその息子は麻酔薬に対して拒否反応を起こす体質なんです。どんな麻酔薬も体が受け付けないので出術はできないというわけです。

 

タイトルにある『アナフィラキシー』というのは息子の体質なんですね。ニュースなんかでは蜂に何度も刺された人がアナフィラキシーショックになったなんてことを聞きますが、別に蜂に刺されるだけが原因ではありません。人によって何がアナフィラキシーショックを起こすかは分からないわけです。この息子は麻酔薬に体が反応してしまうというわけです。

 

麻酔が使えないので現地の医者たちには手が出せない。そこで天才外科医として名高いブラックジャックに手術の依頼が来たわけです。

 

現地の医者には難しくてもそこは天才ブラックジャック。彼は素晴らしい腕で銃弾を取り除き手術を成功させます。

 

この手術の成功を誰よりも喜んだのはブラックジャックに依頼をしてきた軍人でした。

 

「そりゃ、そうでしょ。息子が回復したんだから嬉しいに決まってるじゃん。」

 

そう思いますよね。親なら子供が死の淵から生還したなら嬉しいものです。ただ手放しに喜んでもいられないんですね。というのも父親が喜んだ理由っていうのが「うわぁ‥‥‥。」と思わず引いてしまうようなモノだったからです。その理由とは

 

「息子をふたたび戦場で戦わせることができるから」

 

なんですよ。この家は代々みんな軍人で、父親やおじ、おじいさんなどみんな戦地で死んでいったそうです。「国のために戦って死ぬこと」が一族の、そしてこの父親にとっての誇りなんですって。

 

まぁ代々軍人の家系だったりするとこういう人たちもいるのかもしれませんね。国のために戦って死ぬことが何よりも素晴らしいし誇りである。僕ならゾッとしてしまうというか嫌悪感すら覚えるような価値観ですが、時代や国を問わず軍人の中にはこういう考えを持った人もいるのかもしれない。

 

さて、息子が回復したことで「息子をふたたび戦地へ送り出せる」と大喜びの父親でしたがここでなんと「息子が急死した」という報せが入ります。ショックを受ける父親。そして息子が死んだのはブラックジャックが手術を失敗したからだと思い込み、復讐をしようと決意をするのです。

 

そしてブラックジャックを追いつめる父親。しかしここで父親は銃弾に倒れます。ブラックジャックを救ったのは軍人の息子を担当していた看護婦でした。ここで彼女は驚くべき真実を話すのです。

 

「息子は自分で麻酔薬を打って自殺した」

 

父親は息子が回復し再び戦地におくれること喜んでいましたが、息子は違いました。彼は戦争が大嫌いだったんです。再び戦地へ行って殺されるぐらいならと麻酔薬を注射し自ら命を絶ったわけです。そして一緒にいた看護婦に対して父親への遺言を残します。

 

おやじにいってくれ・・・

メイスン家の名をけがした息子は‥‥‥

天国で笑って

地獄へおちるおやじを見てますとね

引用元:手塚治虫傑作選「日本人と戦争」 著者 手塚治虫 祥伝社

 

この死ぬ間際の息子の表情がたまらんのですよね。手術が成功して再び戦争におくられるっていう時にはものすごく苦しそうな顔をしていたのに、自分で麻酔薬を打って遺言を残している時の安らかな笑顔がなんとも言えない。ようやく解放されたみたいな。

 

彼は戦争で人を殺すことを誇りに思っている父親へのささやかな復讐が出来たと思ったんじゃないかな?悲しい選択だけど息子の気持ちにすごく共感できましたね。僕も殺し殺される場所に行くなんて絶対にごめんです。

 

他にも印象的な作品があって、それは本書の一番初めに掲載されている『悪魔の開幕』という話です。この話は今の日本を想像して描いたような話になっているんですよね。

 

丹波首相は自衛隊をはっきり軍隊といいきり‥‥‥

国民のすべての反対をおしきって憲法を改正してしまった

しかも!核兵器の製造にふみ切ったのだ

―日本が中国やその他の国の圧力から

東南アジアをまもるという名目でだ!

 

手塚先生の想像力すごくありませんか?さすがに、こんなヤバいに国にはなってないけど、その先を見る目には驚かされます。この話は1973年に描かれたものらしいので今から40年以上前ですよ。そんな前に「こういう国になる可能性もあるかもな。」と考えていたのかと思うと、改めて手塚先生のすごさというのを見せつけられた気がします。

 

手塚先生はこういう未来が来るかもなということを予測しつつ、一方で「こんな日本にならないでくれよ。」という思いも込めてこの作品を描いたような気がします。先生の懸念が懸念で終わるようにしなきゃいけませんね。もう二度と漫画家の方達に悲しい戦争マンガを描かせないためにも。

 

他にも本書には戦争を体験した先生の自伝的な話や、原爆の話など戦争をテーマにした作品が多数収録されています。

 

僕を含め戦争を知らない世代が増えてきた今だからこそ、こういった作品を読むことで戦争の悲惨さや恐ろしさ虚しさについて改めて認識しする必要があるんじゃないかなーと思いました。

 

マンガの神様手塚治虫が描いた戦争。きっとあなたの心に訴えかけるものがあるはずです。ぜひご覧になってみてください!!

 

それでは今回はこの辺で失礼します!