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『ふたりのトトロ 宮崎駿と『となりのトトロ』の時代』ジブリファンならぜひ読みたい、トトロが誕生するまでの話。

スタジオジブリといえば、日本が世界に誇るアニメスタジオです。そんなジブリの中心にいた高畑功監督は既になくなり、宮崎駿監督も2013年の『風立ちぬ』で引退を表明(復帰することみたいです)。劇場でジブリの作品が公開されなくなってからそれなりの時間が経ちましたが、ジブリの作品は毎年のようにテレビで放送されますし、今でも子供たちを中心にお茶の間に笑顔と感動を届けてくれています。

 

そんなジブリですが、もちろん最初から日本を代表するスタジオだったというわけではありません。宮崎、高畑両監督を始め、数多くのスタッフたちが作品作りに関わり少しずつその地位を築いていきました。

 

ジブリとしての最初の作品は『天空の城ラピュタ』今や「バルス」でおなじみの作品ですし個人的にも好きな作品なのですが、実はジブリの歴代興行収入では最下位です。

 

超意外な結果!?ジブリ映画の興行収入ランキング | シネマズ PLUS』によると、興行収入は11.6億円。一番売れた『千と千尋の神隠し』が308億円ですし、もののけ姫以降宮崎作品は100億円を切ったことがないので、比較をすると少し寂しい数字ですよね。

 

そんなわけで、決して順風満帆のスタートとはいえなかったジブリが、ラピュタの次に制作したのが、1988年に公開された『となりのトトロ』(宮崎駿)『火垂るの墓』(高畑勲)という2つの作品でした。

 

で、今回僕がちょろっと前に読んだのが、『となりのトトロ』の制作スタッフとして活動されていた、木原浩勝さんが書いた『ふたりのトトロ』という本です。

 

 

 

 

制作という立場で接する宮崎監督とのやり取りが面白い!!

木原さんは、ジブリが本格的にその地位を確立する『天空の城ラピュタ』から制作にかかわった方で、まだ世界のジブリになる前のジブリの内部で活動をされていた、いわば生き字引のような方です。

 

ジブリの本というと、鈴木敏夫プロデューサーが当時のことを振り返るものがけっこうありますが、制作スタッフの木原さん目線で書かれた本書は、鈴木プロデューサーとはまた違う。より現場目線で当時の出来事を振り返っています。

 

で、現場によくいる木原さんだから、宮崎監督ともちょこちょこ話すシーンがあってそこが非常に面白いというか、興味深い。宮崎監督の制作現場はテレビ番組などで何度も見たことがありますが、あれはやはりカメラも入っているしどこか作られたものというか、構えた感じになっています。

 

それとは違い、木原さんが接した宮崎さんは時にオチャメでもあり、作品に真摯に向き合う真面目な人でもあり、こう僕らが知ることができない現場の人ならではの宮崎さんを語ってくれている。そこが非常におもしろいというか、「ああ、読んで良かったな」と思った部分です。

 

宮崎監督に関して言及した場面は何度もありますが、個人的に意外だったのがけっこう宮崎さんって人に相談するんだなと。

 

「木原君!ちょっと!」

最初にお呼びがかかって相談(?)された内容は、

「メイを二人にしようと思うんです。このままだと70分は難しいんです」

「はい‥‥‥二人にするのはわかりますが、メイを二人ってなんですか?」

「お姉さんが必要なんですよ。サツキです」

机の上に置かれた1979年版のキャラクターボードに書かれたメイという名に矢印が付けられてサツキと書かれてあった。

メイは5月の英語読み、サツキは5月の旧暦の異名だ。もともと一人のキャラクターを姉妹に分けたのだからピッタリのネーミングと思える。

「二人の5月ですね。」

「そうです。これならトトロが動けます。」

宮崎さんは満面の笑みを浮かべると、机にまた向かった。

引用元:『ふたりのトトロ 宮崎駿と『となりのトトロ』の時代』p048 著者 木原浩勝 講談社

 

メイとサツキというのはとなりのトトロという作品におけるメインキャラクターです。でも、当初はメイしか登場する予定じゃなかった。まぁ、この辺はジブリについてちょろっと知っている人ならご存知かもしれませんが、僕はこれ宮崎さんが自分だけで考えて勝手に変更したものだと思ってたんですよね。

 

ところが、こうやって木原さんに相談というか、どうだろうかと確認してからサツキというキャラクターが生まれた。まぁ、相談しなくても宮崎さんはサツキも登場させていたとは思うけど、なんかこういう何気ないちょっとしたやり取りの中で、作品の根幹に関わる変更点みたいなのがちょこちょこ出てきたりして、それが読んでて非常におもしろいんですよね。

 

で、もっと印象深いのが宮崎監督が木原さんと、作画監督の佐藤好春さんに「サツキの髪は長い髪と短い髪どっちがいいか?」と質問をする場面です。その質問に対して木原さんは短い髪、佐藤さんは長い髪がいいと答えます。

 

となりのトトロを観たことがある人はご存知かと思いますが、サツキはショートヘアーです。つまり、木原さんの答えが正解なわけですが、この時の木原さんの回答がなるほどという感じがしておもしろい。以下本文より引用します。

 

「短いサツキですよ!」

「‥‥‥どうしてですか?」

と、その理由が知りたいという顔つきになる。

「動きやすいからです。動きやすさ最優先。きっと元々サツキの髪は長かったんです。その絵の通りに。でもお母さんがいませんから家事をしてメイの世話を焼く立場です。朝はまず早起きして食事の準備ですから、髪を梳かすだの編むだの時間がありません。それに長いままだと前に垂れて仕事の邪魔でしょ?だから自分でバッサリ切ってショートヘア。妹の髪は梳いて結んであげても、自分にそんな時間は使わないというのがサツキです‥‥‥で、どうですか?」

引用元:『ふたりのトトロ 宮崎駿と『となりのトトロ』の時代』p050

 

この時すでに宮崎さんの中では答えが出てたっぽいですが、このようにスタッフにもキャラクターづくりの意図をさりげなく考えさせるような質問をしたりするんですね。こういうやりとりを書けるのも現場でちょくちょく宮崎さんと接している人ならではのエピソードって感じがして印象的でした。

 

あと、木原さんと接している時の宮崎さんはなんか茶目っ気があって、好印象です(笑)巨匠宮崎駿というと、どうしても遠い人のようなイメージを持ってしまいますが、ちょいちょい冗談を入れてきたり、わがまま言ったりして人間味があるというか親近感を感じさせてくれます。

 

もの作りの現場の空気がよくわかる一冊!! 

宮崎さんと木原さんのやり取りも非常に興味深いですが、やはり本書を読んでいて一番いいなと思ったのは、制作の現場にいた木原さんの視点から書かれたスタジオジブリの制作現場の空気を感じられたことでした。

 

まだ何も形がない状態から、宮崎さんと木原さんのたった二人でトトロの制作がスタートし、そこからトトロを制作するために建物を借りたり、必要な人材が少しずつ集まり、徐々にトトロという作品が形になっていく。

 

「作品を完成させるためにはどうすればいいのか?」そのために、どういう過程を経て作品が生まれるのかも知ることができる。

 

公開日が設定されていて、決して余裕とは言えないスケジュールの中で「公開日までに完成させる」という目標のために、各々が自分の持てるスキルを発揮していく。宮崎さんもさることながら、この作品のために集められたスタッフたちは精鋭ばかり。その人たちの素晴らしいスキルによって、作品が少しずつ形になっていく。きっと、読んでいる読者もそのすごさを感じとることができるはずです。僕は普通に本を読みながら「すげぇ」とつぶやいてました(笑)

 

でやっぱり、終盤に向かって作品が出来上がっていくのがいいんですよねぇ。僕はアニメの制作現場なんて全くいったことありませんが、決して順風満帆とはいかない現場において、少しずつ作品が完成に向かうにつれて、当時を振り返る木原さんの文章から安ど感、達成感みたいなのが伝わってきて、読んでて「ああ、よかったなぁ。」って思えるんです。

 

この感覚は実際に制作している人たちにしか味わえないものだと思いますが、その臨場感も木原さんの文章を通じて追体験できるわけです。

 

なので、この本はジブリファンはもちろんのこと、「これからもの作りをしたい」とか「もの作りの現場をもっと知りたい」というクリエイターのような人にも読んでほしいですね。時代は違うかもしれませんが、宮崎さんを始め志のある人たちの熱意と技術が合わさって素晴らしい作品が生まれていく感じを追体験しておくことは、モチベーションにもなるし損をすることはないはずです。

 

非常におもしろく、オススメの本でしたので興味がある方はぜひ読んでみてください!!