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『アーティスト』サイレント映画のスターの栄光と挫折を描いた作品

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今回紹介する映画は『アーティスト』です。2011年にフランス、2012年にアメリカ、日本で公開されています。

 

 

監督、脚本はミシェル・アザナヴィシウス。主演のサイレント映画のスター、ジョージ・ヴァレンティンを演じるのはジャン・デュジャルダン。新人女優ペピー:ミラーを演じるのはベレニス・ベジョ。本作は音声がほぼ入っていないサイレント映画です。

 

ここからは本作のあらすじや概要を説明していきます。

 

あらすじ、概要

舞台は1927年のハリウッド。サイレント映画の大スター、ジョージ・ヴァレンタインは女優の卵ペピー・ミラーと出会う。その後ジョージの主演映画のオーディションを受けたペピーはそこでジョージと再会。ペピーの顔に個性が必要だと感じたジョージはメイク道具を使ってペピーの口元につけぼくろを足す。

 

時代は変わり1929年。映画の世界ではサイレント映画から音声が入るトーキー映画が主流になろうとしていた。サイレント映画にこだわり続けるジョージは時代の波に乗ることができず、スターではなくなってしまう。一方新人女優だったペピーはトーキー映画に積極的に進出。盛り上がるトーキー映画の勢いそのままにペピーもスターの仲間入りを果たす。

 

落ちぶれるジョージは起死回生を狙い自らが監督、出演のサイレント映画を製作。ところがその公開日はペピーの新作『つけぼくろ』と同じだった。結果はジョージの惨敗。ますます落ちぶれていくジョージはこの先いったいどうなっていくのであろうか。

 

ここからは本作の感想や雑学をお伝えしていきます。

 

※ネタバレアリなのでよろしくお願いします。

感想 

スターの地位から転落した男の悲哀が胸に来る

あらすじでも書きましたが、本作はサイレント映画からトーキー映画に移行する時代を描いた作品です。

 

主人公のジョージはサイレント映画の押しも押されぬ大スターなわけですけど、ひたひたと迫る新しい時代の波に乗ることができませんでした。自分は芸術家で、トーキー映画はお遊びであるとしてサイレント映画に固執してしまうんです。ところが、大衆は音声が入ったトーキー映画に移行してしまいます。

 

ここからのジョージの転落ぶりが胸に迫るものがあるんですよね。妻とは離婚し、住んでいた大豪邸からは出ていくことになりこじんまりとした家に引っ越すことに。かつてはスターとして人々から尊敬のまなざしで見られていたものの、今では自分の存在なんかすっかり忘れ去られしまっている。おまけにかつて自分の作品でエキストラとして出演していたペピーは今やトーキー映画で大活躍。自分は仕事もないのでやることがなくて酒浸りですから。ジョージの落ちっぷりがすさまじい。

 

本作はフィクションではありますが、おそらくジョージのように時代の変化に対応できなかったかつてのスターたちの中には、彼と同じようにその地位から陥落してしまった人もいて、そうしたスターたちの落胆ややるせない気持ちがうまく反映されているのがジョージなんですよね。実際サイレント映画からトーキー映画に時代が変わる中、セリフ回しやアクセントが正しくないからということで姿を消していった俳優たちは多いみたいですし、(『世界シネマ大事典』フィリップ・ケンプ/遠藤 裕子 三省堂)時代の変化にうまく対応できた人と、そうではない人の明暗がくっきり分かれてしまったのがこの時代だったのでしょう。

 

プライドを捨てることや、環境に合わせて変わるということが大事だし教訓ではあると思うのですが、人ってなかなか変われないし、その変化に対応していくのって大変だよなぁとこの映画を観て改めて思いました。特にいったんスターになったりすると、変わるのってより難しくなるんじゃないかなと。

 

かつてのサイレント映画の雰囲気を楽しめる作品!!

本作の面白いところは、サイレント映画の時代の物語をサイレント映画として製作しているところなんですよね。なので、本作では音楽は流れるんだけどラストの方まで会話のシーンで声が入ってないんです。じゃあ、どうやって役者同士の話している内容を僕らが理解するのかというと、一人が話し終わるたびに場面が切り替わって画面にバーンとその時話していた言葉が文字で表示されるんですね。ただ、全ての会話がそうなるわけではなくて、重要な場面とかだけなのでその他のシーンでは「この人こんなこと言ってるんじゃないか?」と自分なりに想像しながら物語を追っていくことになるわけです。

 

そうすると「えっ?音がほとんどない映画なんて楽しめるの?」って思う方もいるのでしょうが、これがね不思議と楽しめるんですよね。僕自身もサイレント映画なんて初めて観たし、見る前は正直「音声なかったら味気ないものになるんじゃないか?」なんて懸念してたわけですけど、いざ始まってみると退屈せずに最後まで楽しめたんです。おそらくその理由は音がないという普段とは違う映画体験が新鮮だったということがまず一つ。もう一つは音声がない代わりに自分の想像力が刺激されたからじゃないかなと。音という情報がない分、役者の表情とか場面に至るまでの流れや人物の関係性をより注視する必要があるし、その人物がどんなことを考えているのだろうかと想像する場面が増えるんですよね。

 

僕なんかはこれを機に過去のサイレント映画の名作も観てみたいなと思いましたもん。読者さんの中には僕と同じくこれまでサイレント映画なんて観たことないって人もいると思いますが、すごく新鮮な体験ができると思うのでぜひ観てほしいなぁと思います。

 

雑学

本作はカンヌ国際映画祭や、英国のアカデミー賞、米国のアカデミー賞などで数々の賞を受賞しています。その中の一つにカンヌ国際映画祭のパルム・ドッグ賞というのがあるんですね。これは名前の通りドッグ、つまりワンちゃんに対して贈られるもので、毎回優秀な演技をした犬が選ばれています。

 

このアーティストという映画には、主人公ジョージの愛犬であり俳優として相棒でもあるジャックを演じたアギーというワンちゃんがいるのですが、その演技がほんと素晴らしいんですよね。物語の重要なシーンは彼の演技あってのものだし、「これどうやって演じさせてるんですか?」と聞きたくなってしまうシーンがたくさんあって、彼の存在感は人間の役者さんたちに劣るものではないと思いました。ぜひ、かわいらしい犬のアギーが演じたジャックの活躍にも注目してみてください。

 

まとめ

今回は『アーティスト』という映画を紹介してみました。

 

個人的には物語のラストはちょっとうまくいきすぎかなと思ったりもしましたが、全体的にはとても楽しめたし、サイレント映画の雰囲気を存分に味わうことができたので良かったです。興味がある方は是非ご覧になって観てください。