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『総員玉砕せよ!』は戦争を知らない世代に読んでもらいたい漫画である。

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以前Amazonほしいものリストからいただいたこちらの漫画を読ませていただいた。

 

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水木しげる先生の「総員玉砕せよ」という漫画である。

水木先生と言えば「ゲゲゲの鬼太郎」「悪魔くん」など妖怪漫画を描く人というイメージを持つ人もいるだろう。しかし、同時に自身の過酷な戦争体験を基にした戦記漫画も数多く出している。この「総員玉砕せよ!」はまさにその戦争体験を基にした渾身の一冊であると言える。

 

内容

昭和20年3月3日、南太平洋・ニューブリテン島のバイエンを死守する、日本軍将兵に残された道は何か。アメリカ軍の上陸を迎えて、500人の運命は玉砕しかないのか。聖ジョージ岬の悲劇を、自らの戦争体験に重ねて活写する。戦争の無意味さ、悲惨さを迫真のタッチで、生々しく訴える感動の長篇コミック。

引用元:総員玉砕せよ! (講談社文庫)

 

 

この漫画では過酷な戦地での兵隊たちの日常が克明に描かれている。兵隊というと勇ましいというイメージを持つ人も多いかもしれないが、ここに登場する人たちは本当にどこにでもいるごく普通の人たちだ。平時であれば普通に働いていたり、学生をやっていたりするようなどこにでもいる若者たちなのである。

 

ただ戦争はそんな若者たちに「普通でいること」を許さない。敵を殺し、敵に殺される日常。誰かが死ぬのなんて当たり前の世界だ。昨日まで仲良く話していた友が次の日には死んでいる。それでも悲しむ暇なんてない。

 

また日本から遠く離れた南方の地では物資不足で常に飢えとの戦いだ。敵に殺されずにすんでも餓死するものもいる。あるいは川に潜むワニに食べられたり、マラリアやデング熱といった病気にかかって死ぬものもいる。

 

「常に死と隣り合わせの世界」

 

僕らには想像もつかないような戦地の過酷さ、悲惨さは実際に兵隊として自身も死にかけた水木先生だからこそ描けたのだと思う。いやっ、水木先生にしか描けなかったのではないだろうか?

 

また個人的には死を悟った兵隊がまだ元気な部下の兵隊に遺言を言い残す場面が泣けてしまった。以下衰弱しきった上官から部下への言葉。

 

「お前松阪にゆくことがあったら行ってみてくれ」

 

「はい分かっています」「松阪にはお母さん一人‥‥‥」

 

「うん俺 一人っ子だったから」

引用元:総員玉砕せよ! (講談社文庫)

 

一人っ子の息子が戦地で亡くなったと知った時、その母はどんな思いだったのだろうか?そう思うと泣けてしまった。そして当時はそんな境遇にあった人がたくさんいたんだろうなと思った。

 

死の間際、兵隊たちが思うのは国のことなんかじゃない。親だったり、恋人だったり、家族といった身近な者たちへの思いしかない。戦争によって人生を狂わされた人、大切な人を失った人は沢山いた。誰かの人生を犠牲にしてまでやることに意味なんてない。そのことを改めて感じた。

 

最後に

あとがきで水木先生がこの物語は90%事実ですと述べているように、完全にノンフィクションの作品ではない。本作では二度玉砕をするように描かれているが、実際には二度目の玉砕はなかったものだ。しかしフィクションとしてこのシーンを加えることで逆に死んでいった者たちの無念さをより伝えてくれていると思う。

 

水木先生も亡くなり、今後さらに戦争を体験した世代の人たちはこの世を去っていくだろう。僕たち戦後に生まれた者たちにとってますます戦争というものは遠いものになっている気がする。

 

しかし70年以上前に確かに戦争はあった。たくさんの人たちが理不尽な目にあい人生を狂わされた。その事を忘れてはいけない。

 

先生は声高に「戦争反対!!」と叫ぶような人ではなかった。しかし今作はそんな戦争を知らない僕らに水木先生が「戦争をしてはいけない」ということを淡々と伝えてくれる作品だと思う。こういう作品こそ後世に語り継がれべき作品なのではないだろうか?

 

最後にあとがきに記されていた水木先生の言葉が印象的だったのでみなさんにシェアしたいと思う。

 

ぼくは戦記物をかくとわけのわからない怒りがこみ上げてきて仕方がない。多分戦死者の霊がそうさせるのではないかと思う。

引用元:総員玉砕せよ! (講談社文庫)

 

僕を含め、戦争というものがどんなものか知らない人にはぜひ読んでほしい一冊。興味がある方は読んでみてください。

 

それでは今回はこの辺で!!

最後までご覧いただきありがとうございました!

次回もよろしくお願いします!!