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『劇画ヒットラー』孤独な独裁者の一生を淡々と描いた力作。

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「水木先生大好き!!!」

 

ということで今回も先生の作品の中から,僕が好きな一作を紹介させてもらいたい。

 

今作は一人のさえない青年が、のちにユダヤ人の大量虐殺や、世界中を戦争に巻き込み、そしてその生涯を閉じるまでを丹念に描いた作品である。

 

内容

希代の英雄でも狂気の独裁者でもない―水木しげるが見たヒットラーとは?1971年に漫画サンデーで発表された「革命家シリーズ」第2弾。30年の時を経て、オリジナルデザインを再現して復刻。

引用元:劇画ヒットラー (ちくま文庫)

 

ヒットラーの一生がわかりやすく描かれた作品

ヒットラーというと20世紀の世界を混乱の渦に巻き込んだ世紀の大悪党というイメージを持つ方も多いだろう。

 

しかし、そんな彼の青年期はどん底からのスタートであった。芸術家を志した彼は大学受験に二度失敗。一緒にくらしていた友人が音楽家として名をあげると、プライドの高さから耐えきれなくなり下宿先を飛び出してしまう。一時期はホームレスになったり、浮浪者の収容所のようなところで生活もしている。

 

「何でこんな男が国を率いるようになったのか??」

 

当時の彼は権力からは最も遠い位置にいた男であった。リーダーシップがあったわけでも、人脈があったわけでも人を惹きつけるような人物でもない。その頃の彼を知る人物であれば、「なぜヒットラーが国を率いているんだ?」と首をかしげてしまうだろう。それほど青年期の姿とナチス総統として国民を扇動している姿にはギャップがある。

 

ある意味では「人は何かしらのきっかけで変わる。」という分かりやすい例なのかもしれない。この場合その変わるというのが最悪の方に向かってしまったわけだが‥‥‥。

 

水木先生はそういう彼の生涯を様々な文献を参考にしながらしっかりと描いている。やはり漫画ということもあってヒットラーという男の一生がとてもイメージしやすい。活字にしたらかなり長くなるであろう彼の生涯も漫画にすることで最後まで短い時間で読み進めることができる。

 

彼の全てを網羅しているとは言えないが、ヒットラーを知る際の入門書として活用してみるのもいいかもしれない。

 

戦争が起こるまでの流れを把握できる

ヒットラーの生涯を知る上でこの作品はとても秀逸であると僕は思う。そして彼の生涯をたどると結果的に「どうやって戦争は起こるのか?」を知ることにもなる。

 

独裁的な考えを持つ人物が大衆を扇動し政権をとる。法律を制定し権力を自分たちに集中させる。自分たちにはむかうもの、反対するものは容赦なく抹殺する。(逮捕、殺害など)自分たちの利益や野望のために他者を侵略しようと考える→相手国や周辺国との間で摩擦が生じる→戦争がはじまる。

 

必ずしもすべての事例がこれに当てはまるわけではないが、ヒットラーが戦争を起こしたのはまさにこのパターンだ。その中でも特に印象的なのが全権委任法という法律。

 

この法律は簡単に言うと「憲法に拘束されないで法律を制定する権利を与えますよ。」というものである。権力のある独裁者あるいは独裁政権にとって、自分たちを縛る憲法というのは邪魔者でしかない。だから、その憲法を無力化し自分たちの好き放題できるようにしてしまおうという考え。

 

こんな恐ろしい法律を制定させてしまうぐらいだから、当時のナチスとヒトラーにいかに力があったかが理解できるだろう。まぁ、この法律がなくても最終的には好き勝手できただろうが、法律として制定することで見かけ上は「合法的」に好き勝手できるようにしている。

 

ここまで露骨ではなくても権力者が「自分の思い通り」に事をすすめようとしているのならば、それは大衆が監視するべきだし声を挙げて反対するべきだ。まぁ、ヒットラーの場合当時の不安定な社会情勢も味方したし、得意の演説によってその権力の監視装置であるべき大衆ですら扇動し、支持されてしまうわけだが。

 

心理学の勉強などをしていればそういった扇動に惑わされることなく冷静になることができるのだけど、なかなかそれを求めるのは難しい。だったらまずはシンプルに

 

「戦争をしようとしている権力者に反対する」

 

と決めておいてもいいかもしれない。戦争したいという人たちは何かと理由をつけて戦争したがるし、大衆心理をうまく揺さぶって支持を取り付けようとする。でも、冷静になればわかる。

 

「自分の国、そして他国の事を考えたら戦争というのは最悪の選択肢でしかない」

 

ということを。戦争を仕掛けようが仕掛けられようが必ず犠牲者が出る。そしてそのほとんどが兵隊であったり権力とは程遠い一般市民である。

 

「自分の国のために!!」

 

などと高らかに宣言しておきながら、やっていることは自国民やその相手の国民に多大な犠牲を払うだけのただの殺し合いだ。そんなもんを正当化している暇があるなら少しでも自国と他国が平和な状態になれるように策を練るのが権力者であり、政治家の役目であるはずだ。その役目を放棄した人間が権力を握ってはならないだろう。そしてそんな彼らの言葉にのせられてはならない。

 

最後に

ヒットラーの人生はどん底からの出発であり、そこから彼が一国を率いるまでの権力を持つこと自体は興味深い。彼は底辺から権力の頂点までたどり着いた稀有な存在だ。その「諦めない姿勢」というのは善悪はともかく目を見張るべきものがある。

 

しかし、結局のところ彼が死に物狂いで手に入れた権力は国民のためではなく自分や自分の思想のために使われた。そうである以上僕はヒットラーという人物を肯定的にとられることは出来ない。

 

結局は自分たちのことしか考えていないから戦争というのは行われる。ちょっと想像してみればいい。相手にも家族がいて、友達がいて、恋人がいて、子供がいる。もちろん自分たちも同じだ。戦争が起きたらどうなるか??そのつながりは破壊されてしまうだろう。そんなことを許してはならない。

 

この記事では僕の個人的な感想が入っているが、本作で水木先生は余計な感情論などを入れず淡々とヒットラーの生涯を書き上げており、客観的にその生涯をたどることができるだろう。また先述したように歴史を学ぶ上でも非常に参考になる一冊だと思う。ぜひ多くの人に読んでもらえればと思っている。

 

それでは今回はこの辺で!!

最後までご覧いただきありがとうございました!

次回もよろしくお願いします!!